全国ろうあ者大会終了
第66回全国ろうあ者大会が無事終了しました。
大阪という土地柄もあって、賑やかな大会だったようです。
実行委員や関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。
今年は2年に1度の全日本ろうあ連盟の理事選挙が行われ、小金井から立候補された方の名前は当選された16名の中にしっかりとありました。
これから2年間(イヤ、もっと先まで)頑張ってください。
9日の夜は、同じ時間にパーティーと演劇祭が別々の会場で行われましたが、、どちらも盛り上がっていたようです。
展示コーナーでは、いつもと同じように福祉機器、聴覚障害者にとっての便利グッズ、携帯電話メーカーの新機種やアプリなどを使っての新しいスマホの使用方法の紹介などがあったようです。
以前にも少し触れましたが、手話でコミュニケーションを取る方の多くは補聴器を使用していません。
また、使用している方であっても言葉を聞き取るためという方は少なく、何か音がした時に聞こえるようにと補聴器を使っています。
ただ、補聴器で言葉を理解出来るという方も一部いらっしゃいます。
電話でも、慣れた方とであれば会話が出来るという場合もあります。
そういう方に、電話音声を直接聞ける補聴器があるということを広めるためにも、補聴器メーカーも展示に加われば、きっと喜んでくれる方がいらっしゃって、質問等も殺到するのではないかと思っていますが、補聴器メーカーさんいかがでしょうか。
全国大会でなくても、都や県レベルの“聴覚障碍者大会”や“耳の日記念文化祭”でも良いと思います。
考えてみてはいかがでしょうか。
最後の写真はろう者が「拍手」をしている様子です。
ろう者は手をたたいても音が聞こえませんので、見て分かるように手を上げてヒラヒラとさせることで聴者が手をたたく拍手と同じ意味を表しています。
全国ろうあ者大会
6月7日から第66回全国ろうあ者大会が大阪で開かれています。
7~8日は評議委員会などで全日本ろうあ連盟の役員の方々など一部の方々の集まりでしたが、9~10日が本番と言えるでしょう。
参加者は4600人くらいになるそうです。
実行委員の皆さんは2年くらいかけて準備してこられたのだと思います。
ここまで本当に大変だったと思いますが、最後まで頑張ってください。
大阪で開催されるのは3回目ということですが、今回の会場は大阪城ホールをメイン会場にして、近臨の施設が使われています。
昨年の65回大会は福岡で開催されました。
私はまだメーカーに勤めていたので土日は仕事が休みで、福岡の大会には参加することが出来ましたが、今年は仕事があり参加出来ずに残念です。
9日は、午前中に評議委員会の全体会をやっていますが、メインは午後の研究分科会でしょう。
今回は4つの分科会に分かれていて
①情報アクセス・コミュニケーション
②教育
③手話言語
④ろうあ運動
となっています。
その他にも青年のつどいや高齢者のつどいも開かれていて、また夜には、ろうあ者演劇祭典や交歓パーティーも行われます。
10日はメイン会場での式典とアトラクションになります。午前の式典はいつもやや硬い内容になりますが、“式典”だから仕方ないですかね。
午後のアトラクションの内容は3つあるようです。
①関⻄芸術座による劇「遥かなる甲子園」
マンガが原作で、参加者のほとんどの方が知っている内容だと思いますが、当然手話でやるのでしょうから、劇団員の方も稽古は大変だったのではないでしょうか。
私も小学生の時から大学まで野球をやっていましたが、野球が好きで野球をやっているのに甲子園を目指せない高校生がいるというのをこのマンガを読んで初めて知りました。
②大阪府⽴芥川⾼等学校太⿎部による和太鼓
太鼓というのは見るというよりは聞いて楽しむものでしょうが、ろう者が聞いて楽しむことが出来るトップのものが和太鼓でしょう。
きっと音色を身体で感じて楽しんでくれると思います。。
③梅花⼥⼦大学チアリーディング部「レイダース」
海外でも有名なチアリーディング部だそうで、ろう者・聴者を問わず華やかな舞台を楽しめるのではないでしょうか。
今年参加できなかった方も、来年の仙台での大会に参加してみてはどうですか。
補聴器6大メーカー ⑤スターキー
6大メーカーの中では唯一ヨーロッパ以外の国で本社はアメリカになります。
1967に設立された、わりと若い会社ですが、最初にオーダーメイド補聴器の製造・販売を開始したメーカーとして知られています。
世界的にみた場合のシェアは5番目ですが、日本では5番目までには入っていないようです。
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Halo(ヘイロー)iQ [ 2400/2000/1600/1200/1000の5つのクラス ]
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Muse(ミューズ)iQ [ 2400/2000/1600/1200/1000の5クラス ]
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Halo(ヘイロー)2 [ i2400/i2000/i1600の3つのクラス ]
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Muse(ミューズ) [ 2400/2000/1600/1200/1000の5クラス ]
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Halo(ヘイロー) [ i110/i90/i70/i30の4つのクラス ]
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3シリーズ [ 110/90/70/30の4つのクラス ]
ヘイロー2やヘイローよりヘイローiQが性能的には上でしょうから、2400の価格については疑問が…。
ヘイロー2 i2400とヘイローi110は必要ない器種に思えます。
ついでに言えばヘイローi70も必要ありませんし、元々1つのシリーズで5クラスは多すぎるように感じます。
上記の補聴器以外にも、低価格帯の補聴器や、既製の耳あな型、重度難聴者用耳かけ型、障害者総合支援法対応器種、骨導補聴器など、様々な製品がそろっています。
最新器種のヘイローiQとミューズiQは、基本的な性能は同じで、性能的な大きな特徴としては
◆会話用と音楽用の2つの処方式を同時に行う。
◆音を立体的に捉えるための手掛かりとなる4000Hz以上の高音域をやや低い音に圧縮して知覚しやすくする。
などがあります。
ではこの2つの違いは何かというと、ヘイローiQはスマ–トホンとつながり色々なことが出来るが、ミューズiQはそういうことが出来ないということです。
ヘイローiQはiPhoneとペアリングを行えば電話の会話音声や音楽や動画音声を直接補聴器で聞くことや、スマホのアプリを使用してリモコン機能を持たせることが出来ます。
スマホなんて使わないとういう方は、少しお得なミューズiQを選択するということになります。
防水・防塵については、ミューズ・ヘイロー(2・iQを含む)はIP57を取得していますので、普通に使用していての汗や湿気程度であればほとんど問題ないと思われます。
ミューズiQには充電式補聴器もありますが、独自の充電システムではなくZパワーのシステムで、充電池と空地電両方を使用することが出来ます。
補聴器の日
6月6日は補聴器の日です。
補聴器業界ではこれを盛り上げようとしているのですが、一般の方にはまだまだ浸透していないようです。
日本補聴器販売店協会と日本補聴器工業会が1999年に制定したので、もう20年の歴史があります。
なぜ6月6日かというと二つの意味があります。
一つはロゴ(ロロちゃん)を見て分かると思いますが、6と6を向かい合わせると耳に着けた補聴器に見えるというもの。
もう一つは、聞こえにくくなった耳(3月3日)にもう一つの耳を付けると(3月3日×2)6月6日になるというものです。
むりやりこじつけた感はありますが、まあ、「〇〇の日」としてあるのは似たようなものでしょうか。
でも、あまり興味のない方に知っていただくためには、何も無いよりは有ったほうが良いのかなと思います。
国が出した新オレンジプランには、難聴は認知症の危険因子であるとされています。
つまり、難聴をそのまま放置しておくと認知症になる可能性が高まるということです。
このことは、以前から学会などでは発表されていたことですが、国もそれを認めて動き出したということになります。(実際はまだ何も動いておらず、変わったことはありませんが)
軽い難聴であれば、ご本人は少し困ったり不便だったりするくらいで、これ位なんでもないよと思っている方が多いと思います。
または、困ってはいるけれど補聴器を着けるほどでは…と。
実は、本当に困っているのは本人ではなく身近にいる方々という場合も多いのですが、ご本人に向かって「補聴器着けたほうが良いんじゃない?」とは、なかなか言い出せなかったりします。
でも、これを認知症予防と考えてみてください。
遠慮している場合ではなく、提案してあげられるのは家族など身近にいる方しか出来ないことです。
そういうきっかけとなる補聴器の日であれば、むりやり制定したのだとしても、意味あるものだと思います。
補聴器6大メーカー ④リサウンド
会社名はGNヒアリングといい、本社はデンマーク。
昨年会社名が変わり、それまでのGNリサウンドといったほうがピンとくる方が多いかもしれません。
ベルトーンも同じグループ会社です。
国際的には4番目のシェアになっていますが日本では3番目(海外メーカーとしては2番目)に販売台数が多いメーカーになっています。
日本では、6大メーカーの中では唯一直系の販売店を持っておらず、その分多くの補聴器専門店や眼鏡店で取り扱われているようです。
このメーカーが独自に開発してきたものが、今では補聴器業界全般に広まっているものがいろいろとあります。
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初めてオープンタイプ(耳を塞いでしまわない補聴器)を開発
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現在はどのメーカーでも使用しているハウリング抑制システムの開発
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充電式補聴器の開発(残念ながら十数年前は上手くいきませんでした)
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補聴器の2.4GHz通信システムの開発
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補聴器の2.4GHz通信システムの開発
また外マイク(MIH)タイプの耳あな型補聴器やディンプルシェルはこのメーカー独自の特徴となっています。
MIHは通常の耳あな型より小さく作ることが出来ますし、ディンプルシェルの耳あな型は通常シェルの耳あな型よりずいぶん装用感の良いものになっていて好評です。
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リンクス3D (9/7/5の3つのクラス)
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リンクス² E(9/7/5の3つのクラス)
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エンツォ3D (9/7/5の3つのクラス)
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エンヤ (4/3の2つのクラス)
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ベア3
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リンクス3D ( 9:\490,000 / 7:\330,000 / 5:\220,000 )
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リンクス²E ( 9:\380,000 / 7:\250,000 / 5:\180,000 )
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エンツォ3D ( 9:\490,000 / 7:\330,000 / 5:\220,000 )
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エンヤ ( 4:\140,000 / 3:\120,000 )
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ベア3 ( \98,000 )
上記の補聴器の他に小児用のアップスマート(9/7/5)、軽度難聴者用の既製の耳あな型レックス(8/4)総合支援法対応の重度難聴用で、エンツォ5E、アップスマート5E(588)、エンヤ2(288)、ベア2(280)、マッチ90、マッチ80。
高度難聴用で、アップスマート5E(577)、エンヤ2(277)、ベア2(270)、マッチ70など非常に多くの器種があります。(覚えるのが大変です)
総合支援法対応では、性能的にいっても高度用でアップスマート577、重度用でエンツォ5Eとアップスマート588があれば、その他の補聴器の出番はないのでは?と思っています。
耳かけ型補聴器は数字で形やパワータイプを表しています。(外耳道内レシーバタイプをRIE(他メーカーではRIC)と呼んでいます)
◆61 PR41電池を使用するRIE
◆62 PR48電池を使用するRIE
◆70/77 オープン・クローズ切り替え可能な通常のBTE
◆80/88 パワータイプのBTE
◆90/98 スーパーパワータイプのBTE
性能的な特徴としては、おまかせ全自動というのを謳っています。
これは、周りの環境に合わせて各機能が自動で切り替わるものです。
◆両耳連動指向性:声センサーにより環境にあった指向性モードになる
◆環境適応雑音抑制:周りの雑音レベルに合わせて雑音抑制レベルを変更。
◆環境適応システム:環境に合わせてボリュームを変更。
◆空間認識:音源が動いていても方向感や距離感を分かりやすくするもの。
以上が主な内容になりますが、この辺りについてはどのメーカーでもある程度の機能を備えていますので、私の耳では性能の違いを感じることはほとんど出来ません。(上記の機能が有るものと無いものでは違いはありますが、どのメーカーでも上位機種同士を比較した場合は大きな性能差を感じることは出来ませんでした。)
リサウンドの大きな特徴といえばワイヤレス機能ではないでしょうか。
テレビに付けた送信器や、話者の近くに置いたマイク送信器からの音声を中継器無しに直接補聴器で受信して聞くことが出来ます。
最近、他メーカーでも同じような通信が出来るような器種がいくつか出てきましたが、リサウンドは以前からこのシステムです。
ミューズiQには充電式補聴器もありますが、独自の充電システムではなくZパワーのシステムで、充電池と空地電両方を使用することが出来ます。
遠隔サポートまた、遠隔サポートも可能で、装用者がリクエストをスマホで送ると、受け取った販売店がリクエストに合った調整を行います。
販売店がそのデータを送信すると装用者はスマホでデータを受信し、受信したデータを自分の補聴器に取り込むことで調整が完了します。もちろん、細かな調整は難しいでしょうが、簡単な調整であれば、販売店へ足を運ぶことなく行うことが出来ます。
補聴器の防水・防塵については、IP58となっています。
ただ、補聴器の表面はもちろん内部の部品一つ一つに撥水コーティングがされているので、防水という考え方ではなく、水や汗が侵入しても大丈夫ということを謳っているようです。
充電式補聴器もありますが独自の充電システムではなく、Zパワーのシステムで充電池と空地電の両方を使用することが出来ます。
補聴器6大メーカー ③シグニア
“シグニア”というブランドは一般の方にはまだ馴染みの薄い名前かもしれません。
1878年にドイツで起こった会社で、1913年に補聴器を出した“シーメンス”というとご存知なのではないでしょうか。
シーメンスという企業は今も存在する巨大な企業ですが、補聴器はそこから離れてシバントスグループに引き継がれ、ブランド名がシグニアとなりました。
レクストン補聴器も同じグループ会社です。
日本の業界では2番目に高いシェアで、海外メーカーの中では一番多く販売されています。
国際的なシェアは3番目ですが、ワイデックスとの合併が合意にいたったようですので、この順位も今後変動するのではないでしょうか。
一般補聴器には現在5つのシリーズがあります。
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NX(エヌエックス) 2018年1月~ 7/5/3の3つのクラス
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Primax(プライマックス) 2016年5月~ 7/5/3/2/1の5つのクラス
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Orion2(オリオン2) 2015年~
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Sirion2(シリオン2) 2015年~
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Intuis(インティス) 3/2の2つのクラス(3:2017年~、2:2015年~)
Motion(モーション) 通常のBTE
Pure(ピュア) RICタイプ
Ace(エース) PrimaxでPR536電池使用のRIC
耳あな型で特殊なシェル
◆COOL(着け外しが簡単なオーダーメイド)
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◆7NX:510,000 ◆7primax:490,000 ◆Orion2 :160,000
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◆5NX:360,000 ◆5primax:340,000 ◆Sirion2:110,000
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◆3NX:270,000 ◆3primax:250,000 ◆Intuis3: 90,000
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◆2primax:180,000 ◆Intuis2: 79,800
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◆1primax:140,000
独自の充電システムを持っていて、NXの全てのクラスのPure(チャージ&ゴー)
タイプとPrimaxの7/5/3/2のクラスのPureタイプが対応しています。(Primaxでは充電タイプをcellion(セリオン)といっています)
充電器に補聴器を置くだけで良いので取り扱いは簡単です。
防水・防塵については、NX耳かけ型(PureとMotion)と、Primaxの充電タイプのCellionがIP68、その他の耳かけ型がIP67となっています。
耳あな型補聴器のシェル(補聴器の機会の部分ではなく周りの部分)のカラーが8種類あって、耳あな型でも色を選ぶ楽しみがあります。
ワイヤレス機能を持った補聴器であれば、“Signiaテレケア”というサービスを利用することが出来ます。
これは遠隔操作で補聴器を調整するものです。
細かい調整は対面形式で調整するのが基本ですが、簡単な調整であれば、お客様が販売店へ行かなくても調整を受けることが出来るシステムです。
NXの性能的な特徴は“自声処理機能”です。
特許を取っている機能で、自分の声とその他の音を万別して、自声の増幅をを抑えることにより、会話中の自分の声の違和感を改善するものです。
確かに少し違うような気がします。
iPhoneと連動して電話相手の声を補聴器で聞くことはもちろん、音楽や映像の音声を直接補聴器で聞くことや、スマートホンをリモコンとして使用することも出来ます。
また、テレビの音声も専用の送信機をテレビに接続することで、中継器なしで補聴器で聞けるようになりました。
補聴器6大メーカー ②オーティコン
1904年設立(本社はデンマーク)バーナフォン補聴器も同じグループ会社。
日本でのシェア4~5番手ですが、世界的には2番目に販売台数の多いメーカー。
耳かけ型のフルデジタル補聴器を世界で初めて開発したことが知られています。
補聴器の性能とは別な問題ですが、製品に付いている名前が多いので覚えるのがやや大変。
まず最新器種の「Opn(オープン)」性能の高い方から、Opn1、Opn2、Opn3。
価格はオープン価格となっています。(シャレではありません)
ただ、おおよその価格として、Opn1:55万円、Opn2:30万円、Opn3:23万円
程度に設定している店が多いようです。
形状は3タイプあります。
ミニRITE ・ ミニRITE-T ・ 耳かけ型PP
Opnの特徴はいろいろとあるようです。
◆ツインリンク。
この技術は業界初のようで、左右の補聴器の両耳間通信と外部機器との通信を
2つの独立したワイヤレスシステムで行っています。
◆オープンサウンドナビゲータ。
この説明は難しい言葉が並んで理解するのが大変で…。
理解出来たかどうかも分からないのですが、全方向指向性という考えかなと思います。
これまで全方向指向性というと無指向性を意味していましたが、本当の意味での全方向指向性という感じがします。
私の耳ではその効果をまだ感じたことはありませんが、難聴の方が大勢の集まりなどに参加した場合、その恩恵を受けることが出来るのかもしれません。
◆音空間認知機能LX。
人は二つの耳で音を捉えた時に両耳の聞こえの差(時間差や音圧差)で音源の方向を知ります。
耳が持っているその本来の機能と同じような働きを、両耳の補聴器が通信しながら再現しようとするものです。
他のメーカーでも同じような機能を持っているものがありますが、大勢の中で会話する場合には効果を発揮しそうです。
◆IFTTT(イフト)
世界初で、補聴器がインターネットとつながって、生活が便利になるというものですが、まだハッキリその意味をつかめていません。
今後、その使い方の幅が広がっていけば、“便利”を実感出来るのかもしれません。
◆充電式
OpnミニRITEは充電式タイプの選択もできます。
通常は充電池を充電しながら使用しますが、充電し忘れた場合などには普通の空気電池も使えます。
Opn1、Opn2、Opn3の違いについては、騒音抑制、音源定位、言葉の明瞭さなどが少しずつ違ってくるようです。
Opn以外の一般補聴器で、まず価格について。
RITE(外耳道内レシーバ型、他メーカーではRIC/RIE)
(2015年5月販売開始)
性能差が少しずつありますので、やはり上位器種のほうが騒がしい場所や大勢の集まりでは聞きやすいと思います。
高い音を聞きやすいやや低い音にする周波数変換機能(スピーチレスキュー)は、圧縮ではなく移行という方法を取っているようです。
テレビの音、携帯電話の声、少し離れた人の声などをワイヤレス通信で聞くための機器等は充実しており、また、FMシステムの送信機、受信機も揃っています
高度・重度難聴者用にDynamo(ダイナモ)が10/8/6/4の4器種とSumoDM(スモーDM)がありますが、性能的にSumoの出番はあまりないのかなあという気がします。
小児用のSensei(センセイ)や総合支援法対応器種で、高度用1器種、重度用2器種など補聴器の器種は豊富に揃っています。
ただ、Opnを含めてすべての補聴器の中で、PR48電池を使用するRITEの器種が無いのは少し残念です。
防水・防塵は、Opnと耳あな型全てはIP68。
Opn以外の耳かけ型はIP58を取得しています。
通常使用で汗をかくくらいであれば問題ないと思います。
(毎日のお手入れ乾燥等は必要です。)
最後に音質について。
中高域の音がしっかり出ています。
特に4KHzの周波数辺りは、他のどのメーカーより出力されているのが特徴ではないでしょうか。
慣れないとキンキンとかシャリシャリと気になるでしょうが、明瞭度が上がりやすい音質だと思います。
補聴器6大メーカー ① フォナック
1947年スイスで設立。
ブランド名はPHONAKで社名はSONOVA(ソノヴァ)。
ユニトロン補聴器もグループ会社。
ソノヴァグループでは人工内耳も手掛けています。
日本では販売台数が業界で5番目までに入るかどうかというくらいで、どちらかというとあまり知られていませんが、世界的にみると一番販売台数の多いメーカーです。
現在販売されている一般補聴器は2シリーズ
◆ビロング(B)シリーズ(2016年12月~)
◆ベンチャー(V)シリーズ(2015年2月~)
補聴器の形状で名前がついています。
◆バート(耳あな型)
◆ボレロ(標準耳かけ型)
◆オーデオ(RIC耳かけ型)
◆ナイーダ(パワータイプ耳かけ型)
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◆ 90 (プレミアム)(高性能・高価格)
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◆ 70 (アドバンス)
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◆ 50 (スタンダード)
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◆ 30 (エッセンシャル)
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◆B90:\500,000
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◆V90:\460,000
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◆B70:\350,000
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◆V70:\320,000
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◆B50:\250,000
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◆V50:\230,000
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◆B30:\180,000
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◆V30:\150,000
ビロングとベンチャーの違いはというと、ここが大きく変わったというのはないようですが、細かい部分で性能・精度が高まったということ。
“静かなところではあまり変わらないかもしれません。でも、騒がしい場所では聞きやすさが変わりますよ”とメーカーの方からの説明がありました。
ただ、私の耳では違いを感じることができませんでした。
Vシリーズには子供向けの「スカイ」が90/70/50で「こども価格」で販売。
30は軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度及び障害者総合支援法対応器種になっています。
バートBには材質をチタンに出来るものがあり、1~2万円高くなりますが強度が高いため薄くすることができ、結果的により小さな補聴器にすることができます。
また、独自の充電システムがあり、ボレロB-PRとオーデオB-Rの2器種がこれに対応しています。
それから防水・防塵の国際保護等級ですが、ビロングの耳かけ型は全てIP68を取得していて水やホコリなどには非常に強いということを示しています。
ベンチャーの耳かけ型は、IP68・IP67・IP57が混在していて、耳あな型はビロングの一部器種だけがIP68となっています。
フォナックの技術的な一番の特徴は、「オートセンスOS」と呼ばれているものでしょう。
カタログの文言をそのまま書き出すと、
“周囲の音環境を分析し、最適なプログラムを自動的に選択・ブレンドする機能”
つまり、その補聴器の周りの環境が白いか黒いのかを判断してそれに合った聞こえに切り替えるのではなく、薄いグレーや濃いグレーなど様々な濃淡に合わせて聞こえを少しずつ変化させていくということだと思います。
30では、ある程度限られた環境内での機能のようですが、90では様々な環境で聞こえ方が変化するようです。
また、「サウンドリカバー」という周波数変換の機能があり、こちらは多くのメーカーで似たような機能はありますが、高い音を少し低い音にして聞きやすくするというものです。
少し低い音にするためにこのメーカーでは“圧縮”という方法を用いています。
ワイヤレス機器で、テレビの音声、携帯電話の相手の声、少し離れた人の声などを無線で飛ばして補聴器で聞くという機器類は充実していますが、スマホとペアリングして音楽や動画の音声を補聴器で聞けるというのはまだないようです。
ただ、オーデオB-ダイレクトは、スマホとペアリングすることにより、専用アプリでスマホをリモコンのようにして使用出来ます。
また、電話がかかってきた時に補聴器のボタンを押すと相手の声が聞こえるようになるのですがそれだけではなく、こちらの声が補聴器のマイクを通して相手に届くというのは驚きです。
母体がワイヤレス通信機器の会社だけあって、これまで教育現場でFMシステムを導入した補聴器がほぼこのメーカーで占められていたような状況でした。
昨今では、FMからBluetoothに替わって、ロジャーが教育現場で大きなシェアを占めています。
他のメーカーの補聴器でもフォナック製の受信機を補聴器に付ける(オーデオシューも必要)ことにより、ロジャー送信機からの音声を聞くことができます。
素晴らしい機能を持った補聴援助システムですが、結構高価なため、もう少し安くなると良いのになあ…という声が多いように思います。
最後に音質について…。
言葉の聞き取りを重視した聞こえになっていて、1~5KHzでしっかり音が出ているので、メリハリの利いた明瞭な声に感じると思います。
悪く言えばキンキンしたとか、トゲトゲした音ということになるかもしれませんが、ハッキリした聞こえといえるのではないでしょうか。
日本手話と日本語対応手話
日本の手話には「日本手話」と「日本語対応手話」の二つの違った手話があります。
日本語対応手話は、ベースは日本語ですので、日本語をしっかり取得した後に聞こえなくなった、中途失聴の方や、少しは聞こえるという難聴者の方が使っていることが多いようです。
一方日本手話は、日本語の文法とは全く違う文法ですので、生まれつき聞こえない方や、幼少時に聞こえなくなった方が使っていることが多いと思います。
中途失聴だけれども日本手話をつかっているという方も、生まれつき聞こえないけれど日本語対応手話を使っているという方もいらっしゃいますので、上に書いたことは一般的な傾向と思ってください。
ただ日本手話を赤に例え、日本語対応手話を青に例えた場合、紫色の手話や、赤紫、青紫というような色合いの手話を使っている方々も多くいらっしゃいますので、その方の手話がハッキリとどちらかに区別できるというものではありません。
では具体的には二つの手話は何が違うのでしょうか?
日本手話にはあって日本語対応手話には存在しない表現方法がありますし、その逆もありますが、単語はほとんど同じような表現になっています。
決定的に違うのは文法です。
例えば今自分の目の前にいる方に対して「あなたはどんなの仕事をされてますか?」と質問するパターンで考えてみましょう。
日本語対応手話は日本語を手話で表しますから
「あなた」+「何」+「仕事」+「ですか?」
という手話表現になります。
これを日本手話で表すと、
「私はあなたに質問をしますよ。」という疑問文であることを目線や顔の傾きや表情で表します。これが日本手話の文法の一部になります。
手で表す手話はというと「仕事」というだけです。
時間でいうと1秒もかからないような表現で、「あなたはどんなの仕事をされてますか?」という質問をすることができます。
逆に日本語では簡単に話せることを、手話で話そうとすると時間がかかる場合もあります。
もう一つの例で、この2つの関係を考えてみましょう。
例えば、英語対応日本語というものがあったとすると…。
「私は彼に本を借りました。」という日本語を英語で表すと「 I borrowed a book for him 」となります。
これを英語対応日本語で表すと「私 借りた 本 から 彼を 」という感じになるでしょうか。
これくらい短い文であればもしかするとある程度意味も通じるかもしれませんが、基本的には、単語は分かるが意味は分からないということになります。
私たち手話通訳者も、ほとんどの人が日本語を取得した後に手話を学びましたので、日本手話を使っているろう者から、「単語は分かるけど言っている内容が分からない。」と言われることがあります(ありました)。
それで、そういうことが起こらないように日々努力を重ねています。
手話は万国共通?
手話は世界共通ですか?
というような質問を受けることがあります。
見て分かるような単語も多いので、外国の手話と似ている単語はあるでしょうが、日本語が英語と別な言語であるように、手話も国ごとに違います。
また、日本国内であればどこでも同じかというと、これも普通の日本語のように方言もありますし、世代によって少し違ったりする場合もあります。
それから、どれくらい聞こえにくいのか、何歳くらいで聞こえなくなったのか、少し聞こえて言葉を聞き取れるのか、少しは聞こえるのだけれど言葉を聞き取るのは難しいのか、生まれつき聞こえない場合には育った環境によっても、手話は違ってきます。
その代表的な例として「日本手話」と「日本語対応手話」について、次回お話しさせていただきます。
※今回ここに載せている国の名前の手話は、
日本の手話ではこのように表していますがその国の地元では違う表現になります。