2020.04.14

両耳装用のメリット②

前回の『両耳装用のメリット①』では、
メリットと言うよりは、
両耳装用に向く難聴と向かない難聴についてでしたが、
ここからが本題になります。

①両耳加算効果
②騒音下での聞こえの改善
③補聴器を装用していない側からの音に聞こえ
④音の方向感
①両耳加算効果
 これについては多くの方が既に体験してご存知かと。
 例えばテレビを見ている時に片耳をしっかり塞ぐと、
 音が弱く(小さく)なったように感じます。
 片耳と両耳で聞くのでは、ごく小さな音で3dB,
 普通によく聞こえる大きさの音では6dB違うと言われています。
 3dB、6dBというのはテレビによっても違いますが、
 ボリュームでそれぞれ2つ、4つ上げ下げするくらいの違いです。
 イメージとしては下図のようになり、
 補聴器を片耳で使用するより両耳で使用するほうが、
 それだけボリュームを下げられるので、
 耳への負担も軽くなることになります。
②騒音下での聞こえの改善
 両耳から様々な音が聞こえてきた時に、
 人の脳はその中の聞きたいある特定の音を聞こうとして、
 それ以外の音を抑えて聞くという機能を持っています。
 (カクテルパーティー効果)
 人が大勢集まったザワザワした場所で会話する時には、
 片耳装用と両耳装用では聞こえに差が出ます。
 下図はそれをイメージしたもので
 ②-1は声と騒音が聞こえた時に、
 片耳装用では声が騒音にかき消されてしまいます。
 ②-2は片耳装用では通常少しボリュームを大き目にしますので、
 声の聞こえも大きくなるが騒音も大きくなり、
 結局聞き取りの改善にはつながりません。
 ②-3では両耳装用でカクテルパーティー効果があり、
 両耳加算効果もあってボリュームをそれほど上げる必要もなく、
 騒音もそれほど大きくなることはありません。
③補聴器を装用していない側からの音に聞こえ
 これには2つの問題点があります。
 例えば両耳が同じような難聴の方が、
 右耳にだけ補聴器を装用していたとします。
 左側から何か聞こえてきた時に音(声を含む)は、
 約2000Hzより低い音は右耳にもしっかり届き、
 それより高い音は右耳には届き難いという性質を持っています。
 左側からの声は右耳に届く声もあれば届かない声もあり、
 声を邪魔する騒音はほとんどが低い音で、
 右耳でしっかり聞こえてしまいます。
 つまり1つ目の問題点は、ある方向から音(声を含む)が聞こえた時、
 反対側の耳の補聴器では騒音はよく聞こえるが
 声は半分くらいしか聞こえないということです。
 これが両耳装用で改善されることになります。
もう一つの問題点は、
周りが静かだったとしても、
声のした方向と逆の耳の補聴器では、
はっきり聞き取ることが難しくなることです。
これは「サ」を例にすると
「SA」の「S」は高い音で、
「A」は低い音に分類されます。
そうすると右図のように、
左耳側からかけられた「竹下さん」という声は、
右耳の補聴器には「・a・e・i・a・a・n」に。
そうすると「あてにならん」とか
「あれはいかん」と聞き間違えてしまうことも。
両耳が聞こえる状態であれば、
このような問題は改善されます。
④音の方向感は、片耳での気こえでは…。
 目も両目で見ないと距離感がつかめません。
 耳も片耳からの聞こえでは、
 音源がどちらにあるかつかむことができません。
 これも両耳装用で改善することができます。
①~④のように片耳装用と両耳装用では聞こえに違いが出るので、
結果的に、静かな場所で相手が正面にいる場合の1対1の会話であれば、
片耳装用でも補聴効果は得られます。(少し大き目の声で話す必要はありますが)

ただ、それ以外の場面では片耳装用での補聴効果は本当に小さくなります。
例えば複数の人がいて、どこから声をかけられるか分からない場面。
周りにそれほど大きくなくても騒音がある場面。
(元々大きな騒音がある場面では両耳装用でも会話は難しい)

補聴器をどのような場面で使用していたかのデータを取ってみると、
静かな場所で相手を正面にしての1対1の会話というのは僅か数%のようです。
やはり補聴器は両耳装用するということが非常に重要ということになります。

※ここで『両耳装用』と言っているのは、
 単に両耳に補聴器を装用しているというだけではなく、
 左右バランス良く調整されていることが前提になります。
2020.04.13

両耳装用のメリット①

お客様から、よく聞かれることがあります。
「補聴器は1個じゃダメなの?」

結論は、“ダメ”ではありません。
片耳装用でも、装用しないよりは絶対に良いです。
ですが、両耳に装用した場合と比較すると、
装用効果に差が出る場合が多くなります。

ただ注意が必要ですが、
“難聴の方は誰でもが両耳装用のほうが良い”
というわけではありません。
次の方には両耳装用はお勧めしません。
①片耳は聞こえている片耳難聴
②片耳は補聴器を装用しても効果がない重度難聴
③両耳の聴力差が大きい
④両耳の語音明瞭度に大きな差がある

①は、良聴耳は補聴器をする必要がないのですから当然です。
②も、非良聴耳は補聴器の効果が見込めないので当然です。
③は、2つのことを考えなければなりません。
まず、両耳に補聴器を装用する場合、
左右を同じようなバランスにする必要があり、
それが出来るのであれば両耳装用は有効ですが、
聴力差が大きいとバランス良く聞こえるようにするのは難しく、
結果的に両耳装用の効果が得られない場合が多くなります。
もう一つは、左右の聴力差が大きいと、
聞こえの悪い耳は語音明瞭度も悪い場合が多いということで、
これについては④の箇所で説明します。
④上の図は両耳とも難聴レベルは同程度なのに、
 右耳は明瞭度が良いのに対して、
 左耳は明瞭度が悪い聞こえのイメージです。
 ④-1は明瞭度の良い右耳にのみ補聴器を装用しています。
 『サ』という声が右耳ではしっかり聞き取れています。
 左耳は歪んで聞こえるのですが、
 補聴器をしていませんので、よく聞こえていません。
 結果的に正面からの声はほとんど右耳だけで聞いていて
 聞き取ることができています。
 ④-2は両耳に補聴器装用していますので、
 左耳からも声がよく聞こえてはいるのですが、
 歪んでいて何を言われているのか分かりません。
 両耳でバランス良く聞こえてきた声は、
 脳でさらに大きく聞こえるという効果があります。(両耳加算効果)
 しかし大きく聞こえても、右耳だけであれば聞き取れた声が、
 左耳からの歪んだ声が邪魔をして何を言われたのか分かりません。
 このように、左右の耳で明瞭度に差がある場合は両耳装用に適しません。
 
①~④、つまり両耳装用しないほうが良い方は、
私の実感としては難聴者の2~3割くらいの方が該当すると思います。

①~④以外の方は、ほぼ皆さん両耳に補聴器を装用したほうが良いと言えます。
特に「老人性難聴」の方は両耳装用したほうが良いでしょう。
片耳装用でも静かな場所で一対一の会話で、
相手が正面にいる場合は良いでしょうが、
それ以外の場面では両耳装用と片耳装用では、
補聴効果に大きな差がでてきます。
その辺りは次回にまた。
2020.01.24

2019年補聴器出荷台数

先日、日本補聴器工業会から、
2019年の補聴器出荷台数の詳細が発表されました。
日本補聴器工業会には国内にある11社の
補聴器メーカーが加盟しています。

各メーカーが2019年の1年間に、
何台の補聴器を出荷したかを工業会に申告して、
そのデータをまとめたものを発表しています。
出荷台数なので、販売台数とは若干誤差はありますが、
日本で1年間に補聴器が販売された台数として
考えてもらっても良い数字だと思います。

合計台数は613,089台、前年比で4.8%増となっていて、
60万台を超えたのは初めてとなります。
最近3年間と10年前の2010年のデータを比較してみました。
補聴器出荷台数比較
順調に伸びてきているようにも見えますが、
小さな伸びに留まっていて、日本の高齢社会を考えると、
決して良い状況とは言えないと思います。
年間出荷台数
アメリカでは300万台を超えていますので、
人口が約2.5倍と考えても、日本では120万台くらいになっていても…。

日本は難聴者が少ないというわけではありませんので、
それだけ難聴が放置されているということになります。

タイプ的には耳かけ型が増え続けていて、
その他のタイプは減少していますので、
耳かけ型の割合が70%近くになってきました。
欧米では以前から80%~90%になっていますので、
その数字に段々近づいてきています。
タイプ別割合
今回は耳かけ型補聴器の中でも、
RICタイプの補聴器について少し詳しく見てみます。

RICというのは通常の耳かけ型補聴器(BTE)とは違い、
レシーバを補聴器本体から分離させて耳せんの部分へ納めたもので、
補聴器本体がかなり小型になったものです。

重度難聴に対応するのは難しいですが、
軽度~高度難聴に対応することができます。
装着するのがやや難しい面もありますが、
目立たないので人気のあるタイプです。

このタイプの出荷台数は10年前と比較すると5倍増となっていて、
現在も増え続けていますし、今後もこの傾向は続くと思われます。
RIC年間出荷台数
補聴器全体の中でRICが占める割合は年々大きくなってきてはいますが、
それでも38%となっています。
これは増えたほうが良いという数字ではありませんが、
欧米では50%は超えていますので、
日本でもそれに近づいていくものと思います。
RICとそれ以外の補聴器の割合
それから耳かけ型補聴器の中でRICが占める割合ですが、
昨年は56%となっています。
これも増えれば良いという数字ではありませんが、
70%~80%くらいまでは大きくなっていくのではないでしょうか。
耳掛け型補聴器のRICとBTEの割合
先にも書きましたが日本の人口や高齢者の割合等を考えると
60万台というのは非常に少ない数です。
難聴を放置するのは、認知症やうつ病になる危険性が大きくなります。

補聴器が普及しないと考えられる原因

  • 補聴器は価格が高い
  • 補聴器を装用した自分の見た目が気になる
  • 補聴器店は敷居が高い

補聴器を使ったことがあるのに現在は使っていないという方の理由

  • 補聴器を使ってもよく聞こえない
  • 補聴器を装用してもうるさいだけで役に立たない
全て、補聴器業界の努力で改善できる内容だと思います。
補聴器業界も以前と比べれば良くなってきているとは思いますが、
まだまだ変わらなければならないところがあるようです。
2019.10.29

補聴器は非課税

売る
日本補聴器工業会という組織があり、そこには11の補聴器メーカーが加盟しています。
その工業会は4半期ごとに売る何台の補聴器が出荷されたかのデータを出します。
メーカー毎の数字ではなく、11社合計での出荷台数です。

出荷台数なので、販売台数ではありませんが、おおよそ日本で何台くらい補聴器が売れたのか、その目安にはなる数字となっています。
今年の7~9月の3ケ月間での数字は約164,000台。
前年同期と比較して12%増えています。
この10年間で前年同期比で二桁増は初めてです。
税金・請求される(お金等
単純に、補聴器をお使いになる方が増えたのであればうれしいのですが、消費税が上がる前に買っておこう…、
と考えた方が多かったのではないかと思われます。

税金でも、実は補聴器は非課税となっています。
(一度購入したことがある方はご存知だと思いますが…)

つまり増税前の9月までに購入しても、増税後の10月以降に購入しても、税金はかかりませんので同じ金額です。
買う・購入・購入する
この補聴器は非課税ということは、一般の方はほとんどご存知ありません。
購入する時に初めて「そ~なんだ。」となります。

では、なぜ非課税なの?と…。
一般的には『医薬品医療機器等法』で定められた「管理医療機器」だからと言われていますが、「管理医療機器」の中にも課税されているものはあります。

買う補聴器は障害者総合支援法で、聴覚障害者に給付される補装具になっているから。
たぶん、それが本当の理由ではないかと思われます。
2019.07.14

補聴器の進化

スクリーンショット
デジタル補聴器の進化は止まりません。
ただ、音質的にはどのメーカーでも、そのメーカーの考える最高の音質に近づいています。
私が思うには、音質はこれ以上よくなったとしても、人間の耳や脳ではその良さを感じ取れないくらいまで、もうすでにその域に達しているのではと思っています。

聞こえについてもっと進化してほしい箇所といえば、人の声とそれ以外の音を明確に区別すること。
区別が出来れば、声だけを増幅して、それ以外の音は増幅しないようにできます。
つまり、騒がしい場所で会話することが楽になります。
今でも、ある程度はそのようなことが出来てはいますが、その点はまだまだ進化してほしいことです。
スクリーンショット
ボディスコアそれから何回か前のこのコーナーに書きましたが、脳波をモニターすることによって、その人がいろいろな声や音の中で、何を聞こうとしているか分かるので、聞こうとしている声や音に特化して増幅すること、そういうことが出来るように進化してほしいですが、これからの補聴器の進化の中心となるのは、聞こえというよりは付加価値の方面になるのでしょうか。

そういう意味で今回スターキーからリリースされた、『Livio AI』はこれまでより進化した補聴器といえるでしょう。スマホが必要にはなりますが、スマホと連動させることで出来ることがいくつもあります。
スクリーンショット
ブレインスコア補聴器の専用アプリを使用して、話された外国語を日本語で聞かせてくれるというもの。
英語・フランス語・スペイン語・中国語など20数か国語に対応しているそうです。

仕組みは、スマホに例えば英語⇒日本語に設定すると、英語でスマホのマイクに向かって話した時、スマホ画面に日本語に翻訳された文字が表れます。
ここまではよくあるスマホの翻訳機能ですが、これを日本語の音声にして補聴器に飛ばすというもの。
有りそうで無かった機能です。
スクリーンショット
他にも、聞こえとは関係ありませんが…。
「転倒検出通知機能」は、補聴器装用者が転倒した時、スマホに設定された連絡先に、自動で転倒通知を送信するというもの。
高齢者の転倒事故の早期発見につながります。
また、「心拍計測機能」なども備わっていいて、自身の健康状態も確認することが出来るようになっています。
2019.06.18

脳波を読み取って音声を聞く補聴器

先日、面白い記事をみつけました。
コロンビア大学の研究者が行っている補聴器の改良です。
パーティーの様子
元々脳外科手術が必要な患者の中で希望者の脳に電極を埋め込み脳波を調べてみると、脳波の動きが、彼らが耳を傾けようとしている話者の話し方(音声パターン)を反映していると。

補聴器の入力信号を音声ごとに分離して、脳波と同じようなパターンの音声を増幅し、それ以外の音声の増幅を抑えれば、騒音の中でも会話しやすくなるとのこと。
騒音の図
技術的にはそのようなことは可能ですが、ただ、まだ課題は多いようです。

補聴器使用者の脳に電極を埋め込むことは出来ませんので、手術なしで脳波をモニター出来る方法を見つける必要があります。

また、あまり騒音が大きなところでの試験はされていないようで、より騒音が大きく、気の散る要素も増えるような室外環境でも試してみる。

そのようなことが必要なのですが、早ければ、数年後には実用化されるかもしれません。
おじさんの画像
実用化された時に一つ疑問があるのですが…。

いろいろな音声が飛び交っている中で、今、一番聞きたい声(A)だけが聞きやすくなっている時、新たな声(B)が聞こえてきて、そちらに興味が惹かれることがあると思います。

ですが、この補聴システムでは(A)の声を聞いている時は、(B)の声は聞こえにくい状況になっているので、せっかく良い話をしている(B)の声ですが、聞こえないために惹かれることもなく、その声が聞きやすくなるということもないのでは…

ということが気になります。

今はまだ、そこまで求めてはいけないのかもしれませんが。

元の記事データは下記になります。
https://www.gizmodo.jp/2019/06/a-new-hearing-aid-promises-to-tune-out-distracting.html
2019.05.02

補聴器の通信販売

質問の手話
素人が他人事として言っているようで申し訳ないのですが、不思議に思っていることがあります。

質問集音器であれば分かるのですが、デジタル補聴器を通信販売しているのをネット上や新聞広告などで見かけた時に、どんな仕組みになっているのかな??と思っていました。

補聴器と集音器の違いについては、後日また書きたいと思いますが、集音器は簡単に言うとボリュームの上げ下げしか出来ないただ単に音を大きくする機器のことです。
集音器を通販で購入した場合、耳に着けてちょうど良い音量にボリュームを合わせるだけです。
ですが、補聴器はそういうわけにはいきません。

聴力データはどのようにして入力するの?
音質が合わない時の微調整は?
耳せん等の消耗品の交換はどうすれば?
デジタルの手話
故障した時には販売店に送れば解決するでしょうが、それ以外の時はどうすれば良いのでしょうか。
通販元の会社に電話で聞いてみようと思いましたが、電話番号はどこにも載っていません。メールアドレスはありましたのでメールで。

メールなので要領を得ない点も多々ありました。
まず、基本的に調整はせず、ボリューム操作のみで使用する。テジタル補聴器なので、一般的な通販の集音器と比較して、
価格的には結構高いものです。そこそこ高価なのに、その機能をしっかり使わず使用するの?
疑問が残るので再度聞いてみました。
すると、調整は通販会社のショールームか、補聴器メーカーのサポートセンターであれば出来るとのこと。どちらも日本に1箇所ずつです。

有名な補聴器メーカーのものであれば、一般の補聴器販売店で調整してもらうことも出来るでしょうが、そういうメーカーのものではないので、どこの補聴器店でも調整することが出来ません。
支援の手話
電話ならもっと聞きたいことや言いたいことがあったのですが。

集音器より数倍高価なデジタル補聴器ですので、きっと聞こえるに違いない…と、あまり詳しくご存知ない方はカン違いしても仕方ありません。
商売で利益を得るために販売しています。購入された方は高い勉強代を払ったということになるのでしょうか。
(ある通販会社の例を挙げました。そうではない会社もあると思います。)
2019.05.01

補聴器メーカーの合併

今日から元号が『玲和』になり、巷ではこの話題で持ち切りになっていますが、ここでは別な話題です。
シグニア補聴器メーカーの『シバントス』と『ワイデックス』の合併が正式に発表されましたので、その補聴器をお使いの方の中には、不安に思っている方も…。

シバントスという会社は聞き慣れないかもしれません。ブランド名で言うと『シグニア補聴器』となりますが、シグニアは以前の『シーメンス補聴器』を引き継いだものです。シーメンスはドイツのメーカーでしたが、シバントスはシンガポールに本社を構えています。
シグニア
WIDEX
新しい会社名は『WS オージオロジー』となりましたので、いずれその会社から新しいブランド名で、新しい補聴器が発売されるでしょうが、今お使いの補聴器が調整出来なくなるとか、修理出来なくなるといったことは起こりません。

販売店とメーカー間のやり取りは少し変わるかもしれませんが、補聴器ユーザー様にはほとんど影響はありません。
一部影響が出るかもしれないと予想されるのは…。

S社もW社もそれぞれ直系の販売店を持っています。その販売店の店名がどうなるのか、私たちにはその情報はまだありませんが、店がなくなるということは考えられません。
ただ、同じ地域の近くの場所に、S系の店舗とW系の店舗が隣接している場合には、どちらか一つに統合するということはあるかもしれません。

そのような店で購入された方は「次回からは〇〇の店へ行くようにしてください」と案内を受けることになるでしょう。
少し遠くなって不便になる方があるかもしれませんが、もしかしたら、今までより近くの店を案内されて、通うのが楽になるという方がいらっしゃるかもしれません。
シンガポール
店が替わったとしても、これまでと同じサービスは受けられるはずですので、安心していただいて良いと思います。
デンマーク
10年ほど前にP社とR社の合併の話が出た時に、その2社間ではほぼ合意していたにも関わらず、その2社が合併してしまうと、巨大な補聴器メーカーが出来上がってしまうということで、それはよろしくないという回りからの話が大きくなり、合併話しが立ち消えになったということがありましたが、今回はわりとすんなりといったようです。
日本ではS補聴器もW補聴器も人気のあるブランドですので、おそらくシェアとしてはNo.1のメーカーになるはずです。
世界では3番目のメーカーだと思いますが、日本の補聴器業界は少し様変わりするかもしれません。

そして、もう一つ気になるのが音質というか、処方について。
聴力レベルによって、このような音の強さが良いとか、低域は抑えて高域の音を伸ばすとか、その逆に低域の音を強めにして音量感を出すとかという、どういう考え方でどのように音を作るかという処方が、両社はわりと離れた考え方のようですので、今後どのようにしていくのかが、非常に興味深いものがあります。
2019.04.22

耳かけ型補聴器で電話の声を聞く

FAXをする
最近の補聴器は、どのメーカーでもBluetooth対応の補聴器がそろっていて、スマホで電話をする場合は相手の声を補聴器で直接聞くことが出来たり、ガラ携帯でも中継器を使用すれば、補聴器で電話相手の声を聞くことが出来たりします。

ですが、家庭用や職場の電話ではその機能が使えず、テレコイルモードも役に立たない電話が多く、上手く電話をすることが出来ないという方が多くいらっしゃるようです。
(以前の黒電話などは、補聴器をテレコイルモードにすると 声を聞きやすくすることが可能でした。)

確かに普通の会話と比べると、電話の声が聞きづらいということはあるでしょうが、でも、受話器の当て方で随分聞きやすくなります。
補聴器と電話
耳かけ型補聴器では受話器を耳に当てても…。
受話器は補聴器に当てなければなりません。
ただ、受話器で補聴器を覆ってしまうとハウリングが起きることがありますので、その場合は図のように受話器を少し起こして、補聴器を覆わないようにします。
補聴器を覆ってもハウリングしない場合は、そのままで問題ありません。
時間の手話
ただ、受話器を補聴器に当てると言っても、最初は上手く当てるのはなかなか難しいと思います。
そこで、いつも使用する電話機で、117の時報や、177の天気予報など、相手が一方的にしゃべっている声を聞きながら、受話器を持って補聴器付近で動かしてみてください。

受話器の当て方で、ほとんど聞こえなくなったり、とても良く聞こえたりすると思います。その、とても良く聞こえる時の受話器の当て方を、体でしっかり覚えてください。

良く聞こえる受話器の位置を覚えられると、電話の会話は、今よりずっと楽になると思います。
天気の手話
耳あな型補聴器では、受話器は普通に耳に当てれば良いのですが、ハウリングするような場合には、耳に当てた受話器の頬側は受話器を接したままにして、もう一方を耳から少し離して受話器を起こしてください。
それから、電話の音声そのものが小さい場合は、大きくする機能が付いている電話機であれば、大きくすることも忘れないでください。
もしそのような機能がない電話機であれば、電話機に接続するだけで音声を大きく出来る機器もあります。
また、呼び出し音が小さくて、よく聞こえないという方もいらっしゃいますが、これも電話機に取り付けるだけで呼び出し音が大きく聞こえるという機器もあります。
そういう便利なものがいろいろとありますので、使ってみるのもいいのでは…と思います。
2019.04.18

耳あな型補聴器は簡単

お年寄り
私が補聴器専門店を開業してちょうど1年になります。
それまでは10年以上、補聴器メーカーに勤めていました。その前は…といいますと、3年間ほど今と同じ仕事で、難聴の方に補聴器を販売する仕事をしていました。

15年ほど前に補聴器の仕事を始めたころは、耳あな型は取り扱いが難しく、耳かけ型のほうが楽に取り扱える。ただ、耳あな型は目立たないが、耳かけ型は長い髪で隠れる場合は良いが、そうでなければやや目立つと言われていました。

ところが、オープン専用の耳かけ型補聴器の登場で、耳かけ型は「こもらず目立たないがやや扱い難い」に。そして、耳あな型については…。ハウリング抑制の進歩によって外耳道に対して少し小さめに作れるようになって耳に入れやすくなり、耳かけ型と比較して扱いやすいと言われるようになりました。
難しいの手話
※「オープン」とは「オープンフィッティング」のことで、 補聴器を耳に着けた時に耳を塞がないタイプ。耳を塞いでしまうのを「クローズ」と呼びます。
以前は、オープン専用の補聴器がありましたが、最近の耳かけ型は、高度~重度難聴用で、クローズにしか対応していない補聴器を除き、1台でオープンにもクローズにも出来るものがほとんどです。

そして最近、同じようなお客様が続きました。80才代後半または90才代の方で、補聴器は使ったことがなく、聴力はごく平均的な老人性難聴。低域の聴力はあまり低下していませんので、こもらないオープンの耳かけ型で試聴をしていただきますが、聞こえに満足していただけても、ご自身で自分の耳に補聴器を着けることが難しく、今後時間をかけて練習をしてもらったとしても…。
オープン
クローズの耳かけ型のほうがやや簡単なので、そちらで試していただくとなんとか着けられるのですが、それでも結構大変で。
ところが、型は合ってはいませんが、ダミーの耳あな型をお渡しするとスムーズに着けることが出来ます。

耳あな型補聴器の説明をして、きこえや装用感に問題がなければご購入いただくことを前提に、耳あな型を作製して試していただくことに。(もし問題があれば返却していただきます)

以前は耳あな型はこもるというのが欠点でしたが、最近は、こもり感をさらに軽減出来るものが、メーカーによってはいろいろと揃っています。
クローズ
案の定、やっていただくと補聴器の着脱はスムーズで、問題なくご購入いただけたというケースが、何件か続くということがありました。

オープンの耳かけ型を耳に着ける場合、
①補聴器本体を耳に乗せる(掛ける)
②耳せん(イヤモールド)を外耳道に挿入する
③ストッパーをかける

クローズの耳かけ型の場合は、
①補聴器本体を耳に乗せる(掛ける)
②耳せん(イヤモールド)を外耳道に挿入する
耳あな型
どちらも練習すれば①はわりと早い段階で出来るように。
ところが、②の作業が上手くいかないことが多く、②の作業をやっていると補聴器本体が耳から外れてしまいます。(70才代では何も問題なく出来る方がほとんどです。)

耳あな型耳あな型はというと、
①補聴器本体を外耳道に挿入する。 
それだけです。

最初に補聴器の持ち方さえ覚えていただければ、耳に入れるのが難しいという方はほとんどいらっしゃらないように思います。

耳あな型は使いやすいぞ~!!