2021.02.28

新型コロナウイルスと難聴の関連性

新型コロナウイルスが世界中で問題視されるようになってから、
約1年が経過ました。

その間に、これを治療するための薬や、
予防するためのワクチン等の開発が進んできましたが、
その他にも様々な研究が続けられてきたようで、
新型コロナウイルスと難聴の関連性も
少しずつ分かってきたことがあります。
まず、この感染症の症状として特徴的なものに、
呼吸困難と血中酸素濃度の低下があるようですが、
内耳が正常に機能するには多くの酸素を消費しますので、
この症状が出ると内耳の機能が弱まってしまい、
それが聞こえにくさにつながる場合があるということ。

また、これはまだハッキリしていないようですが、
ウイルスの中には内耳を損傷させてしまうものが多くあり、
新型コロナウイルスも同様に内耳に悪影響を与える可能性があるそうです。

それから、感染した時の治療薬ですが、
一般的に使用されている治療薬の中には、
耳毒性のあるものがいくつかあるようです。
その代表的なものとしてはレムデシビル。
一般の方でも聞いたことのある治療薬だと思います。
もちろん、感染したからといって、
多くの方が難聴になるというわけではありませんが、
そういう危険性があるということも頭に入れて、
感染しない・させないために、
一人ひとりが徹底的な対策を!
2020.11.11

鼓膜再生

勉強不足で最近まで知りませんでした。
数年前に、もうすぐこんなことが可能になるという
そんな話は聞いていましたが、
もうそれが現実となっていました。

鼓膜に穴が開いているいわゆる鼓膜穿孔は、
軽い場合は自然と閉じることも多いようですが、
ある程度進行してしまうと、
これまでの治療方法は手術しかありませんでした。
ところが、今は…。
鼓膜の再生を促す薬を使って、
数回の通院治療で穴が塞がり、
聴力も改善させることが出来るように。

鼓膜穿孔の方全員にとって、
この薬の効果が得られるわけではないようですが、
10年(あるいはそれ以上)くらい前に病院で、
治療することが出来なかった鼓膜穿孔も、
現在では治療できるケースも増えているので、
あきらめずに再度病院を受診してみるのが良いようです。
2020.07.14

聴覚情報処理障害③

昨年3月と前回のこのコーナーで聴覚情報処理障害(APD)について書きましたが、
読売新聞にこの障害についての記事Vol.2が掲載されていました。
SN比を大きく改善させることは、
補聴器のみではできません。
ワイヤレスマイクシステムが必要で、
難聴がない方でも補聴器を
受信機として使用することができます。

例えば学校の教室で先生が話す時、
先生から2mの距離の最前列で聞いた時と、
先生が口元から25cmの胸元に
マイクをつけた時の聞こえを比較すると、
距離が半分になると6dB大きく聞こえるので、
2mの半分の半分の半分の距離では、
最前列の生徒より18dB大きな声が耳に届き、
つまりSN比が18dBも改善することになります。
SN比がそれだけ改善できれば、
APDの方でも聞き取りはずいぶん楽になるはずです。

現在はどの補聴器メーカーでも
マイクシステムを取り入れていますので、
最近の補聴器であれば一部の超小型補聴器を除き、
ほとんどの補聴器でこのシステムを
活用することが可能となっています。

また、この送受信機を購入する場合に、
多くの自治体で中等度難聴児発達支援事業での
補助を受けることができるようになってきていますので、
役所へ問い合わせてみると良いと思います。
2020.07.13

聴覚情報処理障害②

昨年3月のこのコーナーで聴覚情報処理障害(APD)について少し書きましたが、
読売新聞にこの障害についての記事が掲載されていました。
補聴器を使用中のお客様にも
この症状の方がいらっしゃいますし、
難聴ではない方の中にも
この症状でお困りの方がいらっしゃいます。
ほとんどの方は静かな場所では会話するのにそれほど困らないが、
周りが騒がしくなると、聞きたい声が聞こえていても、
聞き取ることが難しくなってきます。

『SN比』という言葉をご存じでしょうか。
「S:signal」と「 N:noise」の「比」です。
簡単に言うと聞きたい声の音量に対して、
それを邪魔する雑音がどれくらいあるかということです。

例えば会話している相手の声の大きさが65dBSPLだったとします。
ごく普通の部屋であれば、静かに感じるとしても50dBSPL程度の雑音があり、
その場合、SN比=65-50=15dBとなります。
部屋の中の雑音が大きくなって60dBSPLとなると、
話し手の声の大きさが同じであればSN比は5dBとなります。
若い方で聞こえの障害を持っていない方であれば、
SN比5dBは、何の問題もなく
聞き取ることが可能です。
若い方であればSN比ー2dBでも
聞き取ることが可能かもしれません。

ですが、APDの方は
SN比5dBの環境で聞き取ることは…。
では、SN比を改善するには
どうしたら良いでしょうか。
次回はそのあたりのご紹介をしたいと思います。
2019.09.24

聴覚過敏

ヘッドホン
聴覚過敏用イヤーマフ聴覚過敏という言葉をご存知でしょうか。
これは病名ではなく、聴覚過敏症ともいわれる症状のことで、感覚過敏症の中の一つです。
大抵の人が普通に聞いていられるような音でも、大きな苦痛を伴うほどに大きく聞こえてしまう。
音が耳をつき刺すように感じる。頭の中で大きく反響して聞こえるなど。

苦手な音の代表的なもの

  • 掃除機やドライヤーの音
  • サイレンや電話の呼び出し音
  • 赤ちゃんや子供の甲高い声
  • 食器のぶつかる音やナイフと皿の接触音
それから、我慢できないほどではないとしても、雑踏の中で会話しようとした場合、聞きたい声が周りの音にかき消されてしまい、聞き取ることができなかったりします。
原因として考えられるものがいくつかあります。
顔面神経麻痺などで、耳小骨の働きが悪化し、大きな音を抑制して聞くという働きがなくなる。
突発性難聴やメニエール病などの内耳性難聴で補充現象が起こり、音が少し大きくなっただけで、異常に大きく割れて響いて聞こえる。

また、てんかんや偏頭痛を持っている方、発達障害の方などは、聴覚過敏の症状が出る方が多いようです。

うつ病や抑うつ状態、ストレスなどの心因性、そのようなことが原因となることもあるそうですが、原因不明の場合も多いようです。
聴覚過敏マーク
治療法はまだ確立されていませんが、聴覚過敏となる疾患がある場合には、まずその疾患を治療することとなり、疾患により受診する診療科は違います。

周りの音がうるさくて気になる場合、耳栓やイヤーマフをするのも効果はあるようですが、常時使用していると症状を悪化させることがあるようで、一時的に使用するというくらいにするべきだそうです。

会議や人の話しを聞かなければならないような時で、耳栓やイヤーマフを使用しなければならない場合、その場にいる方に理解してもらう必要があるのでしょうが、聴覚過敏に対する理解は進んではいないようです。

体調などにより症状の重さも違ってきますので、ある時にあまり問題ではなかった音も、別な時には我慢出来ない音に感じてしまう。

また、難聴の方でも聴覚過敏の方はいますので、ある大きさまでの声は聞こえないのに、それより少し大きな声を出すと、うるさいというような表情をされてしまうこともあります。

少し我慢していればその内に慣れるという、そういうものではありませんので、周りの方の理解は不可欠となります。
聴覚過敏マーク2
2019.07.30

音響外傷

選挙の手話
選挙先週の日曜日、参議院議員選挙の投票日で、その前日までは選挙戦で賑やかな日が続いていました。
街頭演説で手話通訳を付ける政党や候補者がありますが、選挙戦最終日のある政党の街頭演説で、私が手話通訳を担当しました。
選挙カーの上に乗って演説するのではなく、選挙カーは車道に停車させておいて、広い歩道の一番車道寄りに演者が台に立って、その横で通訳を行ったのですが、想定外のことが起こってしまいました。
マイクを使って話せる時間は決まっていますので、リハーサルはありません。
さあ始めますと言われて所定の位置に立った私に合わせて、司会担当の方が第一声を上げました。そんなに大きな声を出さなくても…という声で。
スピーチの手話
もっと早く気付くべきでした。
車道に停まっている選挙カーのスピーカーが、私の頭のすぐ後ろにありました。

司会者の第一声を聞いた瞬間に頭の中を殴られた感じがして大きな耳鳴りが始まり、話している方の声はガンガン響くばかりで、何を話されているか聞き取ることが出来ません。音響外傷の症状です。
騒音性難聴は、うるさい職場で何の対策も講じずに長年勤務したことで大きな音を聞き続けたり、イヤホンやヘッドホンで大き目の音量の音楽を、長時間毎日のように長期間聞き続けるなどが原因で、難聴になってしまうことをいいます。

それに対して音響外傷とは、短時間あるは一瞬でも強大音を聞いてしまったことで起こります。
ロックコンサートの会場で、巨大スピーカーの前で大音量をあびてしまったり、間近で風によってドアがすごい勢いで閉まった音などで聞こえ難くなることです。
話すの手話
幸い私の症状は2~3日で改善しましたが、次にこのような機会があった時には、最初にスピーカー位置の確認を忘れないようにします。
2019.07.04

「補聴器外せ!」問題のその後

警察の手話
少し前ツイッターで問題になっていた…。

難聴の方が補聴器を装用して自転車に乗っていた時、警察官に呼び止められて、

「イヤホンで音楽を聴きながら自転車に乗るのは違反です。」

そう言われてイヤホンを外すように促された。

音楽を聴くイヤホンではなく補聴器であることを説明すると、一応誤解は解けたということですが、

「紛らわしいので自転車に乗る時は補聴器を外すように。」

そう言われた難聴の方が投稿して…。

そんなことが話題になっていたのはご存知の方も多いと思います。
それがきっかけになってAbema TVが番組を作りました。
40分近い番組で少し長めですが、皆さんに見てほしいので紹介します。
時間のある時にぜひ見てください。

番組をご覧にになるにはこちら。
https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p1186
点字ブロック
きっかけになった警察官も、今は反省していると信じています。

知らなければ、同じような間違いは繰り返されます。
皆に知ってもらうことがとにかく大事なのですが、補聴器の認知度はまだまだということも痛感しました。

聞こえづらい方はオシャレに補聴器を楽しむ。そんな時代を早く作らねば。
それが私たちの課された役目です。


上記の番組を紹介した記事はこちら
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190702-00010019-abema-soci
音楽・演奏
2019.06.08

新生児聴覚スクリーニング

難聴の赤ちゃん
先日、新聞に驚くべき記事が…。

その前に新生児聴覚スクリーニングについて少し。
生まれつき難聴を持って生まれてくる赤ちゃんは、1000人に1人くらいの割合でいるそうです。
以前は2~3才くらいになった時にこの子はもしかしたら聞こえていないのでは?とやっと難聴に気付くということが多かったようで。
そこから、聴覚支援などを行って言葉を獲得するとなると、なかなか大変で本人や周囲の方々も苦労が多く。
ところが0才からトレーニングを行うと、言語獲得がわりとスムーズに進むそうです。

難聴の早期発見のために行われているのが新生児聴覚スクリーニング。
通常は生まれて数日後に入院先の病院で行います。生まれた病院で検査が出来ない場合は、退院後に別な病院で行いますが、現在は90%以上の産院で検査が行われているようです。

そこで再検査が必要と判断された場合は、耳鼻科などの専門医で再検査を行います。産院で再検査が必要という結果が出ても、最終的には何も問題はなかったということも多いようです。

現在は、この検査に対する公的補助を行っている自治体は少なく、希望されれば検査を行いますよというのが現状で、検査を受ける新生児の割合は60~70%程度。
難聴の赤ちゃん
全国一律に公的補助がされるようになると、義務化と同じような状況が作れるので、全ての新生児が検査を受けられるように、厚生労働省が動いているところだそうです。

前置きが長くなりましたが、私が驚いた記事は。
難聴と判断された乳児の保護者は、専門の方と相談し、人工内耳・補聴器など、聴覚支援を受ける方向で話しをして、子供が言葉を獲得していけるように動いていく。と、私は思っていたのですが…。
ところが、40%以上の自治体で、支援が必要と判断された子供や保護者に対して、支援出来る体制が整っていないということ。

何のための新生児聴覚スクリーニングなのか、早期発見出来ても対処しなければ全く意味がありません。こういう問題にこそ国が強い力を持って、各自治体に行動を起こさせる必要があるのではないでしょうか。
2019.06.07

難聴カミングアウト

趣味・大好きの手話
難しい問題ですが…。
あるお客様(Aさん)は補聴器を装用し始めて1年。少し大きい音は苦手で、補聴器を装用してもよく聞こえるというところまで調整することが難しく、時間をかけてトレーニングしていくしか…。

Aさんが今最も楽しみとしているのがあるサークルの活動。
ただ少し前から、先生が皆に向かって話す声が聞き取れない、サークルが終わって仲間とお茶や食事をしている時のおしゃべりが…。
苦しい思いをかかえたまま続けていました。
サークルの手話
Aさんは、自分が補聴器をしていることを皆に知られたくなく、ずっと話さずに活動を続けていました。
私は、皆に話せばもっと楽になると思ってはいましたが、AさんはAさんなりの考えがあって話さずにいます。

そんなAさんが先日、サークルをやめようと思っていると、暗い表情で店に入ってこられました。

私は、多少聞こえづらかったとしても、先生や仲間に話して配慮してもらえれば、活動は続けられるし、やめる必要はないのではと話しました。
先生の手話
Aさんは、配慮してもらうのは皆の迷惑になると考えているようで…。
ただ、やめる理由として自分が補聴器をしていることを先生に話す決意はされていましたので、私は先生が、「そんなことでやめる必要はない。」そう言ってくれることを期待していました。

すると後日Aさんから電話があり、補聴器をしていることを先生に話して、サークル活動は続けることにしましたと、これまでにないくらいの明るい声で。

私はこれからも、Aさんの聞こえが少しでも改善するよう、Aさんと共に頑張っていくだけです。
2019.04.12

JSpeech( JV2T )

コミュニケーションの手話
耳のきこえに不便を感じている方々のために、
最近はいろいろと便利なものが開発されていますので、紹介させていただきます。

今回は『 J Speech( JV2T )』。

聴覚障害者と聴者がパソコンやスマートホン・タブレットを使用してコミュニケーションを行うために自立コムが提供しているソフトです。

パソコンやAndroidでは JSpeech を、iOSでは JV2T のソフトを使用しますが、Androidには、Text Hear Personal Hearing Aidという専用アプリも用意されています。
アプリの手話
対面で会話する場合に、音声を文字化してコミュニケーションを助けるのは当然ですが、もう一つの重要な使用方法があります。

家庭用(あるいは職場でも)の固定電話に、専用機器(自立コムのテレホンテキスト)を接続すると、電話相手の声が文字になってパソコンなどの画面に表示されます。

このテレホンテキストは聴覚障害者用通信装置給付対象品になっています。